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岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。/ほぼ日刊イトイ新聞

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今回はこちらの本をご紹介します。

タイトル岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。
著者ほぼ日刊イトイ新聞
出版社株式会社ほぼ日
初版発行日2019/7/30
備考紙の本で読了
野々蘭

岩田さんの数々の「ことば」から学ぶ、経営、ものづくり、そして人生!

どんな本?

任天堂の元代表取締役社長、岩田聡さんのことばをまとめた

岩田さんと親交が深かった糸井重里さんが主宰するウェブサイト、「ほぼ日刊イトイ新聞(以下:ほぼ日)」が編集しており、主にほぼ日や任天堂公式ページに掲載された記事からことばを抜粋しています。

岩田さんは「ゲーム人口の拡大」をテーマとし、ニンテンドーDSやWiiなど、数々の革新的なゲーム機や人気作品をプロデュースしてきました。
ときには表舞台に立ち、世界中のゲームファンからも愛される存在となっています。
しかし残念なことに、2015年、55歳という若さで亡くなられました。

本書には、そんな岩田さんの価値観やものづくりに対する思い、人柄が見えてくるエピソードが、ぎゅっと凝縮されています。

任天堂やゲームのファンはもちろん、ものづくりやビジネスに関わるすべての人に読んでほしい1冊。
読みおわったあと、多くの気付きを得られるとともに、どこか温かい気持ちになれると思います。

全体の感想

ざっくり感想

本書と出会ったきっかけは、私が「ほぼ日手帳」の大ファンだったからです(笑)
任天堂のゲームは、子どものころに遊んでいた程度のライトユーザー。
しかし、ゲーム制作はとてもクリエイティブな世界ですし、あの任天堂の(元)社長さんがどんな方なのか気になる!といったノリで本書を手にしました(恥ずかしながら、当時は岩田さんのことを全く知りませんでした…)。

「ほぼ日手帳」は、ほぼ日刊イトイ新聞が2001年より販売しているオリジナルの手帳。1日1ページの自由度が高い判型がメインで、毎年幅広いラインナップが発売される。
岩田さんが制作に関わったゲーム、『MOTHER』シリーズの手帳カバーの発売も、毎年恒例となっている。
2023年には、累計販売部数1,000万部を突破。

本書を読んだ感想をひとことで表すとしたら、「金言のかたまり(物理)」だと思います。

どのページをひらいても、学びになることばや刺激になることばが並んでいて、たくさんのことを気付かせてくれる本でした。

とくにオススメしたいのは、企画やアイディアによって見る人を楽しませたいクリエイターさん、そして、チームで仕事をしている人。
こういった方々には、多くのことばが刺さるんじゃないでしょうか。

野々蘭

正直、好きなことばやエピソードが多すぎて、一部を抜粋して紹介するのが難しい本です(笑)

『じぶん』の経営者として読んでみる

なかには、「自分は経営者でもゲームクリエイターでもないし、あんまり共通点はなさそう」と思う方もいるかもしれません。
私自身も、岩田さんのような方のことばに自分を重ねるのは、おこがましいと思ってしまいます(笑)

ただ、規模はちがえど、自分の活動や生活において、優先順位をつけたり最終判断をくだす場面は出てきますよね。
創作活動であれば、見てくれる人のことを考えてアイディアを出したり、今までとちがうことをしようと挑戦することもあると思います。

これって、やってることはすっごく小さな社長業みたいなことなんじゃないかなと思うんです(そんな単純なものじゃないと、世の社長さんたちに怒られるかもしれませんが…)。

そんなふうに、世界に名を知られる企業の社長のことばでありながら、「なんか遠い世界のすごい人が、凡人にはわからんこと言ってる」というような、”他人事感”や”置いてけぼり感”がなく読めてしまうのが、本書の好きなところのひとつ。
もちろん、決して簡単にマネできることじゃないんだけど、すっと入ってきて、静かに納得してしまうんです。

これは、穏やかで誠実な岩田さんのお人柄がそうさせているのかなと思いました。

野々蘭

自身もプログラマーであり、問題解決に対する冷静さと、思慮深さも持ちあわせていた岩田さん。
会議の際に置かれたお菓子をどんどん食べるため、周囲から『カービィ』と呼ばれていた…という微笑ましいエピソードも語られています(笑)

「ゲームがある日常」は、生み出されたものだった。

先述のとおり、岩田さんは「ゲーム人口の拡大」をテーマとしてかかげていました。

なかでも、2006年に発売されたゲーム機、「Wii」の開発についての話が印象的でした。

今でこそ、ゲームは幅広い年齢層に楽しまれていますが、ひと昔前はそうではありませんでしたよね。

たとえば、ゲームを敵視しているお母さんが、「ゲームばっかりやってないで!」と子どもに言ったり、「ゲームは一部のオタクがやるもの」というイメージを持っている人がいたり。
ゲームの楽しさを知る機会がないまま、自分には関係のないものとして見ている人が多い時代でした。

岩田さんいわく、電源さえ入れてもらえれば本領発揮できる(楽しませる自信はある)のに、「まず、ゲーム機の電源を入れてもらうことが難しい」と。

今の感覚だと「え、毎日ゲーム機を起動するのって、べつに普通じゃない?」と思う人もいるでしょうが、当時はそこまで、ゲームの社会的地位は高くなかったそうです。

そこでWiiが目指したのは、「テレビのように、ゲームが日常に溶け込む存在になる」こと。

家に帰ったらとりあえずテレビの電源を入れるように、日常的に触れてもらえるゲーム機をつくろう、と考えました。

こうして、今までになかったジャンルのゲームを出したり、コントローラーの名称をあえて「リモコン」としたり、さまざまな工夫で、今までゲームをやってこなかった人にアプローチしていきました。

野々蘭

「ターゲット層をズラしてみる」、「コンテンツが日常の一部になる工夫をする」など、ゲーム以外の分野でもヒントになりそう!

ちなみに、Wiiが生まれた経緯については、元任天堂社員で実際の企画開発メンバーだった、玉樹真一郎さんのこちらの本でも読むことができます。

あくまで主題は「コンセプト」についてであり、任天堂の本ではありませんが、こちらも企画やものづくりにたずさわる方、チームで仕事をする方にオススメです。

お気に入りの言葉

本書では、各章ごとに『岩田さんのことばのかけら。』として、印象に残る短めのことばが多数収録されています。

これが本当に金言ぞろいで、ものづくりやビジネスにかかわることはもちろん、人生論としても心に残るものばかりです。

そのなかから、個人的に好きなものを、2つご紹介したいと思います。

自分がなにかにハマっていくときに、
なぜハマったかがちゃんとわかると、
そのプロセスを、別の機会に
共感を呼ぶ手法として活かすことができますよね。

P.98

エンターテインメントの世界では、
ほかとどう違うかをひと言で説明できないだけで
人は興味を失ってしまいます。

P. 165

今回は主に、短めで、ものづくりに対する考え方が表れていることばを選んでいます。
自分が創作をする際に持っておきたい視点として、実際に手帳に書き写していることばです(笑)

他にもたくさんの「ことばのかけら」が載っているので、ぜひグっとくることばと出会ってほしいと思います。

まとめ

今回「ゲーム人口の拡大」ということばが何度か出てきましたが、私自身、そのテーマが実現されたことを実感しています。

というのも、ゲームなんてやったことのない私の祖母が、初めて「自分もやりたい」と言って購入したのが、「ニンテンドーDSi LL」でした。
『絵心教室DS』という、ゲーム機で撮った写真を見ながら、絵の練習をするソフトが欲しいと言いだしたのです。

結局のところ、あまりゲーム自体にはハマらなかったようで、絵の練習は長続きしませんでした(笑)

ですが、スマホを持っていない祖母にとって、このゲーム機はカメラの代わりでした。

スマホと比べてしまうと画質はイマイチですが、80代後半になった今も、ときどき電源を入れては、むかし撮った写真を見せてくれます。
そこには、数年前に亡くなった愛犬や、今はほとんど外に出なくなった祖母が庭で撮った花の写真など、小さな思い出がたくさん残っています。

任天堂が「コアなゲーマー向けにゲームをつくっていくべき!」としていたら、こうした思い出も残らなかったのかなと思うと、天国の岩田さんには感謝しかありません。

最後はすこし自分語りになってしまいましたね(笑)
改めて本書を読み返していたら、ふと頭に浮かんできて、どうしても書きたくなってしまいました。

ブログのテーマ上、「学びが…」とか「創作のヒントに…」みたいな部分をピックアップしていますが、本当のことを言うと、今回は単純に私が好きな本の紹介です(笑)

勉強とかノウハウとかはいったん置いといて、岩田さんのことば選びや考え方、ものづくりへの向き合い方から、皆さんそれぞれ前向きなエネルギーみたいなものをチャージしてもらえたらいいなと思います。

人を楽しませるものづくりをすること。
その素晴らしさを改めて教えてくれた、お気に入りの1冊です。